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2004.08.20

第20回 マスコミの報道を鵜呑みにしていないか?

中国でのビジネスにかかわっている人の話を聞いていると、マスコミに対する評価がことのほか厳しい。「中国に来てみたら事前に新聞や雑誌などで読んでいた話と全然違う」「中国の本当の姿を伝えていない」といった声が非常に強い。

確かに現象面ではそういうことが起きているかも知れないし、メディアの側にも考えるべき点は多々あると思うが、そのことでマスコミを非難するのはやはり筋違いだろう。

マスコミは社会に与える影響が大きいから、客観的で公正な報道をする社会的責任があるという議論はわかる。しかし現実には(残念ながら、というか)マスコミとはどう見ても営利企業であって、その商品(つまり情報) 提供の判断基準は最終的には「売れるか、売れないか」にあると考えるのが現実的だ。

これは中国報道に限ったことではないが、メディアを通じて世に出ている情報は、人々が読んで面白いと思う、呼んで楽しい情報である可能性が高い。もちろん個々に例外はあるし、メディア産業に従事している人々の中には金銭以外のことをモチベーションに働いている人もいる。しかし全体的にみれば、メディアを通じて得られる情報にはおのずとある種のフィルターがかかることは認識しておく必要がある。

もちろんメディアの伝えていることはウソではない。正確さには非常に神経を使っていると言っていい。ただ情報の受け手が意識しておくべきなのは、伝えられているのは全体のうちごく一部の現象であって、決して全体像ではないことである。むしろ全体の9割9分を占める「日常的な出来事」は伝えられず、残り1分の「珍しい出来事」が大きく伝えられるというのがマスコミの特性である。

マスコミが伝えるのはあくまで「事件」や「変わった出来事である」。ごく普通の「中国がこうなっている」という話はほとんど伝えられることがない。それは商品として買ってくれる人が少ないからである。なんとかして「普通の中国」を日本の人たちに伝えたいと思っている筆者には、そのことがとても歯がゆく思われるが、まあそれは筆者の力不足ということで、グチになってしまうのでここでは言わない。

いずれにせよ、中国に行ってみずからビジネスに従事しようとするからには、相手にするのは「普通の中国人」であって、マスコミに登場するような特殊な世界の人々ではない。それは日本にビジネスにやってくる外国人のことを考えてもらえばよくわかると思う。海外のメディアで伝えられる日本像は現在でも「フジヤマ、サムライ、ウォークマン」の類から大きく外れてはいないと思われるが、大方の日本人の生活はもっと複雑で、現実的である。

理解していただけると思うが、マスコミ攻撃が本編の意図ではない。「マスコミとはもともとそういうものだ」ということを理解すべきだと言っているのであって、その気になって接すればマスコミで流通している情報には有益なものがたくさんある。

要は情報を得る側の視点と注意深さの問題である。マスコミとは情報加工のプロであるから、ウソをつかない範囲で素人の皆さんに自分の思い通りの印象を植えつけることなど造作もない。そういう相手に対して一般消費者が対等の立場で情報を選別せよと迫るのは不公平だとは思うが、情報の受け手が賢くならない限り、提供される商品の質もよくならない。

人の話を聞いて参考にする姿勢は大切だが、鵜呑みにしても役に立たない。要は自分の頭で考えて、自分で現実を見て、自分にとって有益な情報は何なのかを判断するしかないということだ。


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