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2004.08.03

第17回 続・中国は「特殊な国」なのか?

同じ文脈で言えば、これも中国の問題として指摘されることの多い、戸籍による国民の管理、誰が所有者なのかよくわからない国有(公有)企業のガバナンス問題、かつてはすべて国が面倒を見てきた住宅の商品化の問題、複雑かつ不可解な部分の多い企業内の各種手当---といった問題は、実は「中国の」または「中国人の」問題ではなく「社会主義の」問題なのである。

現に社会主義国のベトナムに行ってみると、中国と同質の問題を抱えつつ改革を進めているし、かつて社会主義であったロシアやモンゴルなどの事情を聞いてみると、やはり計画経済から市場経済への移行に向けてのシステム変革が大きなテーマになっている。

このように漠然と「中国の問題」と考えられている事柄から、前回のべた「開発途上国に共通の特性」をはぎ取り、そこからさらに「社会主義国の特性」をはぎ取ると、残った特殊性はさほど多くないことがわかる。

さらに、そこには「日本のほうが特殊で、中国や欧米諸国に共通な点」というものも多々あるから、それを差し引くと、純粋な意味での「中国だけが世界の中で特殊である点」というのは非常に少なくなってしまう。

私個人の大雑把な感覚値だが、世間で「中国の問題」とされているもののうち、5割ぐらいは開発途上国に共通な特徴で、2割ぐらいが「社会主義」に共通の問題、2割が「日本のほうが特殊」である点、という感じで、中国の特殊性というのは1割ぐらいではないかと思う。

中国以外のたとえば東南アジアの日系企業を訪ねてみても、そこで起きている問題点は、人材採用の困難さや日本的経営システムの可否、経営現地化の難しさ、本社と現地法人のコミュニケーション---など中国の日系企業が抱えている問題とほとんど一致している。

つまり日系企業の海外進出で起こる問題の相当部分には国を超えた共通性があり、中国だけがことさら特殊ではないことのひとつの傍証だと思う。

にもかかわらず中国については「中国は違う、中国は特殊だ」という言説が説得力を持つのは、それはやはり中国が大国であり、日本にとっての存在感が大きいためだろう。タイやマレーシアで起きても大きな関心を呼ばなかったことが中国で起きれば日本人にとって違う意味を持つことは自然なことだと思われる。

しかしこのことは逆にいえば、中国以外で日本人や日本企業が体験したことは、中国でも十分通用する可能性が高いというひとつの傍証にもなりうる。現に中国の日系企業の幹部には、中国以外の主として東南アジアの国々で事業を立ち上げたり、現地法人や工場を立ち上げたりといった経験を持つ人が多い。

具体的な事例は後章に譲るが、そういう人たちに話を聞いてみると、やはり中国がとりたてて他の国々と違うという感想を持っている人は少ない。中国以外での経験を多少手直しすれば十分通用するとの意見が大勢だった。

このことは中国進出にあたっては、自社の従来の海外事業経験の十分な研究が必要であること、そして海外での実績のある人材の投入が中国での事業にも役立つ可能性が高いことを示しているといえよう。

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コメント

こんにちわ。中国の人口、をたどってやってまいりました。中国でのビジネス、非常に興味深い内容です。
で、いま世間を、スポーツファンを大騒ぎさせている「アジアカップ・ブーイング問題」について、もし取り上げられることがありましたら
是非、blogして頂きたいと想うのですが。
現在、日本では「嫌中」なる言葉が増殖中……というのは捏造ですが

投稿: タイで想う日々 | 2004.08.04 12:08

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