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2004.07.29

第16回 中国は「特殊な国」なのか?

中国ビジネスに携わる日本人と話していると、意識の根底に中国とは世界の常識に外れた特殊な国だという先入観があるような気がする。果たして本当にそうなのだろうか?

確かに中国は世界最多の人口と有数の巨大な国土を持つ国だし、おまけに世界に残り少なくなってしまった社会主義を標榜する国で、いまだに1人あたりGDPは世界の最貧国のひとつに分類される国である。こんな国は他にはない。社会には問題が山積しているし、普通の日本人がいきなり中国に行けば、驚き、違和感を感じることが多いのはよくわかる。

しかしその中国の問題点や違和感の中身を冷静に分析してみると、「中国」とか「中国人」の特性というよりも、「生活水準の低い開発途上国であること」や「「社会主義国であること」に起因する部分のほうが大きいことに気付く。

たとえば中国を初めて訪れた人は、大都会の一部を除いて、街が全体的に薄汚れていて、不衛生なのに驚く。人前で平気でタンを吐く人もまだまだ多いし、路地裏の公衆トイレは周囲に異臭が漂う。「中国人は何と衛生観念の低い人々か」と民族性を結論にしてしまいがちだ。

しかし考えてみると、現時点では中国社会の衛生観念が相対的に低いのは事実だが、それは平均的な生活水準が低いことに大部分は原因がある。世界中どこでも貧しい地域の衛生観念は豊かな地域より低いものだし、豊かになってくれば誰でもより高いレベルの清潔さを求めるようになってくる。タイやマレーシアなど東南アジアの国々や香港、台湾なども経済成長によって見違えるほどきれいになった。

日本だって同じだ。私は1950年代に東京都内で生まれ、60年代に郊外の住宅地で育った。家は普通のサラリーマン家庭で、ごく普通の一戸建ての住宅に住んでいたが、水洗トイレはなく、汲み取り式のトイレは悪臭漂い、ハエが飛び交う、今思えばひどい環境だった。

でも当時はそれが普通だったし、周りの家も似たようなもので誰も何とも思わなかった。しかしもし当時、アメリカ人が私の家のトイレを見たら、気持ち悪くて入る気にならなかったろうし、「日本人は衛生観念が低い」と判断したに違いない。

衛生観念の問題以外にも、たとえば中国の問題として指摘されることの多い、政府の政策や法律がコロコロ変わる、役人が賄賂を取る、行政機関の効率が悪い、政治の民主化が遅れている、人権意識が低い、環境問題への取り組みが遅れている---といった問題は、何も中国だけの現象ではなく、開発途上国ならどこにでも普遍的に存在する問題であり、今は先進国と呼ばれている国々でも、昔は等しく存在した問題である。

言い方を変えれば、中国でも(いつのことかはわからないが)、経済レベルが向上すれば、いずれ解決される可能性が高い問題だということもできよう。

中国に何か問題が存在するからといって、それをすぐに「民族性」「お国柄」に結論づけてしまうことには慎重でなければならないと思う。

(この項つづく)


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