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2004.06.26

第9回 続 「時給制の皿洗い」は合理的か?

では中国人が喜んで皿を洗う条件とはどのようなものか。

それは働いたら働いただけ、その場で目に見える形で自分の利益になって返ってくる仕組みを作ることである。


たとえば皿を洗った枚数に応じて賃金を支払う出来高制とし、それに累進性を持たせるといった運用が代表的な例であろう。つまり大皿は1枚13円、どんぶり1個10円、小皿7円などと報酬を決め、100枚を超えたぶんからは1割増し、200枚を超えたら2割増しなどとするのである。

こういうシステムにすれば、中国人は他人を押し退けてでも皿を洗おうとする。洗うスピードも格段に速くなるはずだ。それどころか皿を早く洗い終わってしまえば「もっと洗える皿はないのか。これしか仕事を出せないのは客を集められない主人の責任だ。休業補償を出せ」と店主の責任を追及し始めるかもしれない。

ただしこのような制度を導入すれば、皿の枚数を稼ぎたいために必ず洗い方が雑になってくるから、それを防ぐために要求する洗浄度を事前に明確に取り決め、合意しておくとともに、それをチェックする人員を配置するなど、作業の品質を確保する方法を講じておく必要はある。

ここで述べているのはひとつの例で、実際に中華料理店でこの通りにシステムを導入せよと言っているのではない。実際には時給制には「計算が簡単である」という大きなメリットが存在するので、日常的に店主の目が届きやすい小規模な料理店では時給制のほうが効率的であることもあるからだ。

しかし要するに人が積極的に働くか働かないかは「どのようなシステムになっているか」で決まるのであって、自分の利益になると確信すれば、働かない民族など存在しない。したがって従業員が働かないとすれば、それは思わず働きたくなるようなシステムを作れない経営者の怠慢か能力不足というべきで、従業員のせいにしてはいけない。

実はいま皿洗いの例で説明した「歩合給+累進性」の報酬システムをとっている職業は日本にもたくさんある。タクシーの運転手さんなどはその代表的な例である。だから何も日本人が特殊なわけでも、中国人が特殊なわけでもない。要は働く人の、働く目的に合ったリターンが得られる仕組みになっているか。それが問題なのである。

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