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2004.06.23

第8回 「時給制の皿洗い」は合理的か?

ある日本の中華料理店の店主に言われたことがある。
「いやあ、なんだかんだ言ってもやっぱり中国人は働かないね。洗い場に中国人のアルバイトを雇ったんだけど、一緒に雇った日本人の大学生は言われなくてもきちんと仕事をするし、人が見ていなくてもサボらない。ところが中国人のバイトは私が見ていればそれなりにやるが、いなくなるとすぐに手を抜く。もう中国人は雇いたくないね」。

これは日本国内の話であるが、この種の中国人観というのは日本では広く普及しているようで、日本人は世界に冠たる勤勉な民族だが、中国人はスキあらば手を抜こうと思っている怠惰な人々である……という認識は意外と根深いような気がする。

しかしこれは物事の一面しか見ない、極めて手前勝手な議論であると言うしかない。

先の洗い場の例で考えてみよう。この例ではアルバイトの賃金は時給800円で、もちろん国籍による差はない。まず基本的な問題として、「皿を洗う」という作業の賃金を時間単位で決めること自体、合理的なのかという問題がある。

なぜかといえば、皿洗いは「皿をきれいに洗い終わること」が目的なのであって、そのために費やす時間は短いほどいい。にもかかわらず時間単位で賃金が支払われるのであれば、ゆっくりやったほうが収入が多くなることになる。

逆の言い方をすれば、1時間仕事をしさえすれば、洗う皿の枚数(=労働量)に関係なく時給800円はもらえるのだから、クビになりさえしなければ労働量は少ない方がいいと考えるのが理にかなっている。

つまり、一生懸命皿を洗うより、仕事はそれなりにこなしておいて、あとは店主にお世辞でも言って良好な関係を構築し、クビになるのを防ぐほうが手っとり早いと考えられる。

中国人は一般にこうした合理的な思考を持つ人々だから、自分が同意した契約条件の中で、自分に最も有利な働き方を考えて、それを実行する。

皿を洗うという行為をどんな条件の下でも全力を尽くして実行する人がいたとすれば、その人の精神は非常に立派なものだと思う。しかし論理的に考えれば、一生懸命働いても時給800円、手を抜いても800円という条件下で、アルバイト学生が一生懸命働いた結果、トクをするのは残念ながら経営者であって、働いた本人ではない。皿洗いを精神修養だとでも言うなら話は別だが。

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