« 第4回 中国の労働力は本当に豊富か? | トップページ | 第6回 「中国はコネの国」は本当か? »

2004.06.18

第5回 すでに「人材難」の中国労働市場

中国は公共交通や通信、エネルギーなどのインフラの整備段階が低いから、外国企業は製品や原材料の輸出や国内市場へのアクセス、外国人駐在員の生活などに便利な大都市近郊に立地する例がほとんどである。それも同様の理由から、「経済開発区」とよばれる一種の工業団地のようなところに立地するケースが多い。

たとえばマレーシアなどに行くと、果てしなく続くパームオイルの畑を車で走り抜けると、忽然と日系メーカーの大工場が現れたりするが、これはマレーシアなら自分の車やオートバイで通ってくることができる人々が多いうえに、高速道路が発達していて渋滞もないから、通勤バスでもかなり遠くから通えるからである。

ところが中国ではそれができないから、国土が広大な割には外資系企業の労働力需要は特定の地域に集中して発生する。これは中国の労働力マーケットの際立った特徴になっている。いくら人口の多い中国とはいえ、通勤可能範囲を半径15㎞とすれば、その枠内に住む人の数は限られるのは当然だ。

さらにいえば、中国は都市戸籍と農村戸籍という区別を依然として行っており(今後、廃止の方向で検討されている)、人が好き勝手に都会に出て働くことはできない。都市への人口集中とスラム化を防ぐためである。地方政府の関与のもと合法的な労働力移入は行われているが、地方出身者を採用すれば宿舎がいる。遠方の人材なら一定期間の帰郷の便も考慮しなくてはならないし、募集には余分なコストがかかる。

実際、上海から近い江蘇省や浙江省の開発区では、ワーカーに関しては人手不足とはいわないが、かなり知名度の高い企業でもない限り簡単に人が集まる状況ではなくなっている。地域差が大きいので一概にはいいにくい部分もあるが、ホワイトカラー層、それも多少なりとも日本語ができる人材を求めようと思えば、中国の主要な開発区などでは「人材難」と言ってもよい状況である。

中国なら人などいくらでも集まるという時代ではすでにない。中国には確かに人は多いが、外資系企業が適正なコストで活用できる人材は思ったほど多くないのである。

|

« 第4回 中国の労働力は本当に豊富か? | トップページ | 第6回 「中国はコネの国」は本当か? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/38733/790604

この記事へのトラックバック一覧です: 第5回 すでに「人材難」の中国労働市場:

« 第4回 中国の労働力は本当に豊富か? | トップページ | 第6回 「中国はコネの国」は本当か? »