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2004.06.18

第4回 中国の労働力は本当に豊富か?

中国に進出する日本企業の数がこれだけ増え、日中間を往来する人の数も劇的に増えているのに、どうも日本人の中国に対する認識には勘違いというとか、誤解や偏見が多いように思う。こうした誤解や偏見は中国ビジネスの戦略を立てるうえで大きな障害となっている。

まずはそうした誤解や勘違いの例を並べてみよう。

中国というとまず日本人の認識に出てくるのが「人が多い」ということである。14億人ともいわれる膨大な人口を抱え、安い人件費というイメージも強い。労働力などいくらでも簡単に確保できそうな気がする。確かにそれは一面の事実ではあるが、こと日系企業のビジネスという観点から考えた時、中国は実は日本人が考えているほど豊富な労働力を持った国ではない。

そう言える背景には、中国のいくつかの地理的、社会的な要因がある。

まず中国の人口だが、先頃発表された「中国の雇用状況と政策」(国務院報道弁公室)によると、中国の人口は12億9000万人。うち就労人口は7億4432万人である。これは膨大な数ではあるが、問題はこれらの人々がどこで何をしているかだ。

実はこの7億4432万人の就労人口のうち、4億8793万人は農村にいる。都市の就労人口は2億5639万人である。
農村にいる人の中でも、地方の民営企業などで雇用されている人もいるから、農村人口=農民というわけではないが、農村で民営企業に雇用されている人が仮に1億人いると仮定しても、いわゆる賃金労働者は、都市就労人口の2億5639万人にその1億人を加えた、約3億5千万人ほどということになる。

日本の場合、国土が中国よりはるかに小さいし、農村戸籍と都市戸籍の管理による居住地の制限などない。交通機関が発達しているし、たいていの人はマイカーを持っているから、農村に住んでいる人であっても、簡単に都市部に通勤して働くことができる。日本なら通勤電車やマイカーで片道1時間半、距離にして50㎞から場合によっては100㎞ぐらい離れていても通勤することは可能だ。だから約8000万人とされる日本の就労人口は、その気になればほぼ全てを都市労働者として活用することが可能であると考えられる。

しかし農民と都市住民の区別が厳格で、通勤のための交通機関が貧弱な中国では、農村部に住む人が都市近郊の工場で働くことはそんなに簡単なことではない。そう考えると、中国で都市近郊の工場労働者として雇用できる人の数というのは、約3億5000万人程度、つまり日本の3~4倍ぐらいしかいないのである。人口が10倍だから、労働力も10倍、という単純な理屈にはならないのだ。このことは基本的に押さえておく必要がある。

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