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2004.06.15

第1回 まえがき

「中国人に対するこの偏見、根拠のない先入観は、どうにかならんのか」。

これがこの本を書いた動機でした。

「中国ビジネス」という言い方はあまり好きではありませんが、とにかく中国で、中国人と商売をしようとするならば、それに見合った戦略を立てる必要があるのは当たり前です。

どんな商売にしろ、要は人が働いてお金を儲けるのですから、中国での商売は中国人が喜んで働きたくなるような気分になってもらうことが成功のカギです。至極当たり前のことです。

ところが日本人は「中国人とはどんなことに喜ぶ人たちなのか」「中国人とはどんなことに不愉快に思う人たちなのか」といった、相手の基本的な生き方を理解することに甚だ関心が低いように私には思えます。

「自分たちのほうが先に金持ちになったのだから、オレたちの言うことを聞け」という発想が原点にあるのだと思いますが、「相手の理屈で考えてみる」ということが少ない。

加えて、日本の無責任な評論家や出来の悪いメディアなどの影響もあって、日本ではいわゆる「華僑の商法」とか、「中国人とつきあうには一緒にメシを食え」とかいった俗説が横行し、テレビや雑誌の中国特集といえば、いまだに真っ赤なタイトルバックに龍が踊り、自転車の大群が走りゆくという有り様です。

こんなステレオタイプな理解でもって、ビジネスに有効な戦略など立てられるはずがありません。

人に働いてもらうにしろ、モノを買ってもらうにしろ、相手に対する認識が根底から間違っている、もしくは決定的に不足しているのですから、そうした前提にのっとって立てられた戦略は当然間違っています。土台がズレているのですから、先にいけばいくほど、その誤差は拡大していきます。

こうした愚かな循環は止めなければ、日本人、中国人、お互いのためになりません。

それはさておき……

「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社刊)は、中国の日系企業において効果的なマネジメント手法を実施して成果を挙げている日本人経営者の方々のご教示をもとに、中国でのマネジメントの方向性を探ろうとしたものです。

この分野で一定の専門性を持つ類書が少なかったこともあり、おかげさまで出版以来、多数の方にお読みいただき、高い評価を得ることができました。この本を書いたのは1996年のことで、すでに発刊から8年が経過していますが、いまでも中国の日系企業の総経理室にお邪魔すると、書棚にこの本が置いてあるのを目撃したりします。とても嬉しいことです。

また「この本をぜひ読みたいのだが、どこにいけば買えるのか」というお問い合せをしばしばいただきます。残念ながらこの本はすでに絶版となっており、古書店を探す以外に入手の方法がありません。

この間の中国の変化は驚くべきものがありますが、日系企業のマネジメントという観点からいえば、この本で指摘し、解決策を模索したたさまざまな問題点は、この間ほとんど変わっていません。むしろ日本企業の進出が増え、規模が拡大したおかげで、一部ではマネジメント上の問題がより顕在化し、深刻な形で表面化しつつあるともいえます。

執筆時と比較して、中国の法律や制度は大きく変わっていますが、この本でご紹介している経営者の皆さんの手法は、「中国人の考え方を理解し、いかに有効なマネジメントを確立するか」という観点に貫かれており、その本質的な視点は現在でもまったく変わることなく通用するものです。

こうした状況に鑑み、ウェブ経由という新しい方法で、この本を改めて皆さんのお役に立てることはできないかと考えました。

ぜひご愛読をお願いします。

田中信彦

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